Spring Ephemeral


命どうしの呼吸が隅々まで行き渡る森の中。

ひとり佇んでいる。

絵巻のように流れ広がる、スプリング・エフェメラルに囲まれて。

いま出会っているカタクリが芽生えたのは七年前。東日本大震災のさなか。

悲劇と恐怖が下界を支配したあの時のこと。

初めて地上を知ったカタクリは、何を感じたのか…。

カタクリは黙したまま、七年前まで自分がいた地面を見つめている。

花弁に湛えた木漏れ日が揺れている。

近くの沢の音に、時おり「カサッ」と、熊笹が擦れる。

カタクリは、沈黙している。

私の問いはそのまま自分に跳ね返り、また返し、それを繰り返しながら、

問いも記憶もこだまのように消えてゆく。

私は静寂な点となり、森の呼吸に溶け込んだ。


自然の摂理。

そう、カタクリは「来年」も「7年」も知らない。

ここにあるのは、自然の摂理だけ。

逃げもせず、抵抗もせず、運命を受け入れて、

「ここに咲くこと」にすべてを捧げている。

そのひたむきさが、カタクリの美しさを際立たせていた。

野の花は、いつもそうだ。

林道をトボトボと帰るその背後からささやきかけて、

「個」を取り除く代わりに、温もりと優しさを置いていく。